幽波紋とは|スタンドの漢字表記・第3部で波紋が主役を降りた理由

幽波紋とは、スタンドを漢字で書いたときの表記です。ただし、第1部・第2部の波紋と同じ力ではありません。

波紋は呼吸法で生み出す「太陽光と同じ波動」のエネルギーです。スタンドは第3部から登場する「パワーを持った像(ヴィジョン)」で、作中の仕組みは別です。

字に「波紋」が入っているので、「スタンドって波紋が進化したもの?」と混乱しやすいところ。

作者の荒木飛呂彦にとっては、どちらも超能力を絵にするための表現です。担当編集の「もう波紋、古いよな」をきっかけの一つに、次の形としてスタンドが生まれました。

この記事では、波紋とは何かと、第3部で波紋が主役を降りた理由をまとめました。第3部のジョセフや第7部の鉄球との関係も、原作の巻数と発言の出典つきで確かめられます。

第1部〜第4部と第7部、小説『無限の王』の設定に触れますが、各部の結末のネタバレは含みません。

波紋とは|呼吸で生む「太陽光と同じ波動」のエネルギー

波紋(波紋法)は、東洋の仙道に伝わる秘術です。独特の呼吸法で血液中にエネルギーを蓄え、生命力を活性化させます。

そのエネルギーは「太陽光と同じ波動」を持つので、太陽光に弱い吸血鬼を倒せます。第1部・第2部の戦いの中心にあるのが、この波紋です。

原作では第3巻、ツェペリが現れる「凶人ジャック&奇人ツェペリ」「奇跡のエネルギー」の回で登場します。アニメなら第1部第4話「波紋疾走(オーバードライブ)」が最初の回です。

荒木は、目に見えないものをどう絵にするかを考える中で波紋を作りました(『荒木飛呂彦の漫画術』集英社新書、2015年)。カエルを殴ってもカエルは無事で、下の岩だけが割れる場面は、そこから生まれています。

この「見えない力を絵で見せる」発想が、のちのスタンド誕生につながります。

「波紋」の意味と名前の由来

ふつうの日本語の「波紋」は、水面に物が落ちたときに輪を描いて広がる波の模様です。周りに次々と伝わる影響、という意味もあります(デジタル大辞泉)。

作中の波紋は、呼吸で練った生命エネルギーが特有の振動を持つ力。水面に奇妙な「波紋」を起こすことから、この名で呼ばれます。

英語では「Hamon」とローマ字のまま書かれ、直訳すると「Ripple」です。

波紋でできること

波紋の使い道は、吸血鬼を倒すことだけではありません。第2部に入ると設定が掘り下げられ、次の表のように技の幅が広がります。

できること中身出てくる部
吸血鬼・屍生人を倒す「太陽光と同じ波動」を流し込む第1部から
痛みを和らげる・けがを治す生命力を活性化させる第1部から
水や金属に伝える水面を歩く、剣などに流す第1部から
若さを保つ老化を遅らせる第2部(リサリサ・ストレイツォ)
くっつく・はじく電磁力のように引きつけ、はじく第2部
髪やシャボン液を操る波紋が伝わりやすい物に流す第2部
日光のように増幅するエイジャの赤石で集めて放つ第2部

どれも、呼吸で練った同じエネルギーを「何に、どう流すか」の違いです。ジョナサンが使った7つの技は、ジョナサン・ジョースターの記事で一覧にしています。

誰が誰に波紋を教えたのか

第1部・第2部の波紋は、師匠から弟子へ修行で受け継がれます。

師匠弟子出てくるところ
トンペティツェペリ、ダイアー、ストレイツォ第1部
ウィル・A・ツェペリジョナサン・ジョースター第3巻
ストレイツォリサリサ第2部の設定
リサリサ(師範代ロギンズ・メッシーナ)ジョセフ・ジョースター、シーザー・ツェペリ第8巻

アニメ公式の人物紹介では、ジョセフは「未熟ではあるが、生まれつき波紋を操ることができる」と紹介されています。ヴェネチアでリサリサに弟子入りし、修行を経て波紋を完全に操れるようになりました(第8巻)。

「ジョセフはなぜ波紋を使えるのか」の答えは、生まれつきの素質と第2部での修行の両方です。

スタンド(幽波紋)とは|「幽波紋」と書いて「スタンド」と読む

スタンドは「パワーを持った像(ヴィジョン)」で、持ち主のそばに現れて能力を出します。

原作に初めて出てくるのは、第12巻の最後に入っている第3部の第1話です。第3部の初期は、「幽波紋」と書いて「スタンド」と読ませる表記が使われていました。

ジャンプ・コミックス第13巻に入っている話の題「幽波紋(スタンド)の戦士たち」が、その一例です。『週刊SPA!』(2007年)の用語解説にも「初期は幽波紋と表記」とあります。

TVアニメ第3部の公式サイトも、第2話のあらすじで「幽波紋(スタンド)」と書いています。

なぜ「幽」と「波紋」の字を当てたのかは、原作では明かされていません。このあと紹介する作者のインタビューも、字の由来には触れていません。

要するに、「幽波紋」の字は、波紋とスタンドのつながりを示す根拠にはならないということです。

呼び名の由来(Stand by me)や射程などの決まりは、スタンド(幽波紋)の基本ルールにまとめています。

波紋とスタンドの違い

波紋とスタンドは、正体も身につけ方も違う別の力です。5つの項目で比べます。

項目波紋スタンド
出てくる部第1部・第2部(第3部はジョセフのみ)第3部以降
正体呼吸で練る生命エネルギー生命エネルギーが作り出す像
身につけ方師匠について修行する生まれつき・血縁者の影響・矢など
見え方体や物を流れる力として描かれるスタンド使いにしか見えない
戦いでの特徴太陽光に弱い相手を倒せるスタンドに触れるのはスタンドだけ

見分ける目印になるのは「身につけ方」の行です。修行で覚える技術か、目覚める才能かという差が、第7部第10巻の説明につながります。

第3部で波紋が主役を降りた理由|作者と担当編集の発言

理由の手がかりは、作中ではなく作者と初代担当編集の発言にあります。作中の描写と作り手の発言を、分けて見ていきましょう。

作中では「波紋をやめた理由」は語られない

第3部以降はスタンドが戦いの中心になり、波紋による格闘戦は描かれなくなります。例外は第3部のジョセフで、波紋を使う場面が残っています。

ただ、波紋からスタンドに切り替わった理由を説明する場面は、原作にありません。

きっかけは担当編集の「もう波紋、古いよな」

荒木は、初代担当編集の椛島良介の一言が、スタンドを考えるきっかけの一つだったと話しています。

この話が出てくるのは、2012年の日経クロストレンドの記事。日経トレンディ11月号の特別インタビューのこぼれ話として、次のように語っています。

もっとも、担当編集の椛島さんが、「もう波紋、古いよな」とか言い始めて、そのプレッシャーで考えたというのもありますけどね(笑)。

同じ話は、SPURムック『JOJOmenon』(集英社、2012年)にも出てきます。

10年後、『JOJO magazine 2022 WINTER』の対談でも、同じ趣旨の一言が話題になりました。荒木が「第2部の連載途中で『波紋はそろそろ飽きられているよな』って言ってましたよね」と振ります。

椛島の答えは「ああ、それは言いましたね」。言った本人も認めているので、2人の証言がそろった話です。

波紋もスタンドも「超能力を絵にする」ための表現

『週刊SPA!』(2007年)で、荒木は連載の始めから「超能力を絵にしたかった」と語っています。それが波紋とスタンドかと聞き手に確かめられ、「そうです」と答えました。

『JOJOVELLER』(2013年)の椛島との対談で、荒木は波紋なら「絵に描けるから」強さを見せられたと話します。

同じ対談で椛島は、「波紋という超能力がまだまだ抽象的で、セリフで説明しなくちゃいけなかった」と振り返っています。

スタンドで目指したのは「それこそマンガ的な絵」です(荒木、日経クロストレンド、2012年)。スタンドが実際に動けば「相手とのヒリヒリするような距離感も表現できる」とも語りました。

第13巻の作者コメントには、従来の超能力はビルを崩したり光や電気で強さを表したりしていた、とあります。そのうえで「目に見えない超能力、それ自体を表現できないかなぁと思って考え出したのが『スタンド』です」と続きます。

作中の力としては別物でも、作り手の側では、スタンドは波紋に続く、超能力を絵にする次の表現でした。

第3部以降の波紋はどうなった? ジョセフと第7部の鉄球

波紋は第3部で消えたわけではありません。第3部ではジョセフが使い続け、第7部では鉄球の技とあわせて新しい説明が加わります。

第3部のジョセフは波紋を使い続けている

アニメ第3部の公式サイトは、ジョセフを「戦闘ではかつて習得した波紋と併せ、老練な戦い方を見せる」と紹介しています。

第13巻では、花京院の頭から抜き取った肉の芽を波紋で消します。脳内の肉の芽を消す場面は、TVアニメで足されたものです。

第27〜28巻のDIO戦では、全身に波紋を張り巡らせて戦います。ハーミットパープルのイバラに波紋を流し、DIOに直接触れさせない戦い方です(アニメ第3部第45〜47話)。

ちなみにイバラの蔓は、波紋をより視覚的に表現したもの。函装版『JOJONIUM』第9巻の「誕生秘話」で、荒木がそう語っています。

勘違いされやすいのですが、「ジョセフは波紋をやめた」わけではありません。「波紋で戦う主人公がいなくなった」と覚えると、第3部の場面と食い違わなくなります。

イバラと波紋の使い方はハーミットパープルの能力で詳しく扱っています。

第7部では「スタンドに近づく技術」と説明される

第7部では、ジャイロ・ツェペリの鉄球が回転し、その振動が「波紋」を生んで相手の体に作用します。

鉄球の回転は、代々処刑人と医者を務めてきた一族が「処刑と医術」のために磨いた技術です。スタンド能力ではありません。

第7部第10巻では、この鉄球の技が、第1部・第2部の波紋とともに「スタンド能力に近づく」技術だと説明されます。

第7部は、石仮面や波紋といった第6部までの世界観がリセットされた世界です。鉄球の「波紋」は回転から生まれるもので、呼吸で練る第1部・第2部の波紋とは出どころが違います。

作中で波紋とスタンドが「まったく無関係ではない」と示されたのは、第7部に入ってからです。第1部・第2部から読んできて2つのつながりが気になった人は、第7部第10巻の説明を読んでみてください。

鉄球の技の中身は、ジャイロ・ツェペリの鉄球はスタンドではないの記事で確かめられます。

よくある疑問

ここからは、波紋とスタンドについて気になりやすい疑問を4つ取り上げます。

スタンドは波紋が進化したものなのか

作中で「波紋が進化してスタンドになった」と説明する場面はありません。手がかりになるのは、次の3つです。

  • 原作の描写: 波紋は呼吸で練る技術、スタンドは生命エネルギーが作り出す像で、仕組みが別
  • 作者の発言: どちらも超能力を絵にする表現で、スタンドはその次の形(『週刊SPA!』2007年、日経クロストレンド2012年)
  • 第7部第10巻の説明: 波紋は鉄球の技とともに「スタンド能力に近づく」技術

作中の仕組みで答えるなら、2つは別の力です。作り手の考えで答えるなら、スタンドは波紋に続く次の表現になります。

第3部のDIOはなぜ波紋を警戒するのか

第3部のDIOも吸血鬼で、太陽光(紫外線)や波紋を受けると消滅する体のままです。この弱点は、第1部・第2部の吸血鬼から変わっていません。

第3部の吸血鬼は、DIOと、吸血鬼のエキスを入れられたヴァニラ・アイスやヌケサクです。

注意したいのは、日光や波紋に弱いのがDIO本体だという点です。スタンドのザ・ワールドの能力そのものの弱点ではありません。

波紋とスタンドは両方使えるのか

本編で波紋とスタンドの両方を使うのは、全編を通してジョセフだけです。スタンド使いがあとから波紋を身につける例も、本編にはありません。

本編の外には例があります。真藤順丈の小説『ジョジョの奇妙な冒険 無限の王』に出てくる、98歳のリサリサです。

リサリサは近距離パワー型スタンド「ザ・ハウス・オブ・アース」に目覚め、烈風に波紋エネルギーを流し込んで戦います。

『無限の王』は『JOJO magazine』で3回にわたって掲載され、2024年4月に単行本になりました。

波紋を使えるのに、なぜジョセフは年を取ったのか

波紋には老化を遅らせる力があります。第2部のリサリサは50歳ですが、20代後半のような外見を保っています。

75歳のストレイツォも、同い年のスピードワゴンより若い姿です。それでも第4部のジョセフ(1999年、79歳)は、杖なしでは歩くのも難しいほど年老いています。

荒木は人間と同じ速さで老けた理由を「気の持ちよう」と答えています(インタビュー集『週刊少年「」』太田出版、2003年)。各部のジョセフの年齢や結末は、ジョセフ・ジョースターの記事で一覧にしています。

根拠となる描写と発言

ここまでに出てきた描写と発言を、出典と一緒に1つの表にしました。

描写・発言出典それが示すこと
波紋は仙道の秘術で「太陽光と同じ波動」第1部(第3巻〜)波紋は呼吸で練るエネルギー
話の題「幽波紋(スタンド)の戦士たち」第13巻(1989年)初期は「幽波紋」と書いて「スタンド」と読む
「目に見えない超能力、それ自体を表現」第13巻の作者コメントスタンドは超能力そのものを絵にしたもの
波紋もスタンドも「超能力を絵に」『週刊SPA!』(2007年)2つは同じ狙いの表現
「もう波紋、古いよな」日経クロストレンド(2012年)ほかスタンドを考えたきっかけの一つ
「ああ、それは言いましたね」『JOJO magazine 2022 WINTER』言った担当編集も認めている
「波紋という超能力がまだまだ抽象的」『JOJOVELLER』(2013年)絵で伝えやすくしたのがスタンド
肉の芽を消す・DIO戦で波紋を流す第13巻・第27〜28巻第3部でも波紋は使われる
鉄球と波紋は「スタンド能力に近づく」技術第7部第10巻作中で2つのつながりを示す説明

作中の設定は原作の巻で、波紋が主役を降りた理由はインタビューの出典で確かめてください。

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参考

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