杜王町(もりおうちょう)は、第4部『ダイヤモンドは砕けない』と第8部『ジョジョリオン』の舞台になる架空の町です。作中の住所は「M県S市」で、作者の荒木飛呂彦は、S市が仙台市、杜王町はその郊外の町という設定だったと語っています。
「仙台のどこ?」と地図で場所を探したくなるところですが、実在の特定の町ではありません。作者の発言と原作の地図・地名から、杜王町と仙台のつながりを一つずつ確かめられるようにまとめました。
この記事は第4部の殺人鬼の正体に少し触れます(ネタバレを含みます)。
杜王町の場所はどこ? 何県?
杜王町は、作中の住所が「M県S市」と伏せられた架空の町です。公式サイトの用語解説では「東北のM県S市にあるベッドタウン」とされています(公式ポータル 第4部)。
読み方や何県かといった基本の答えを、早見表にまとめました。
| 質問 | 答え | 根拠 |
|---|---|---|
| 読み方 | もりおうちょう | 公式ポータル 第4部 |
| 作中の住所 | M県S市(第8部はM県S市紅葉区) | 公式ポータル 第4部・第8部 |
| 何県? | 作中の住所は「M県」。モデルは宮城県 | 公式ポータル/作者の発言 |
| 実在する? | しない。作者が作った架空の町 | 作者の発言(2010年) |
| モデル | 作者の出身地・宮城県仙台市 | 作者の発言(2010年) |
| 出てくる作品 | 第4部・第8部・『岸辺露伴は動かない』 | 原作 |
「何県?」と聞かれたら、「作中はM県、モデルは宮城県」と覚えておくと話がかみ合います。
杜王町のモデルは仙台|作者が語った「仙台のどこ」
作者によれば、S市が仙台市で、杜王町はその郊外にある架空の町です。仙台市の「広瀬川ホームページ」のインタビューで、荒木飛呂彦本人がそう語っています。
インタビューの題は「私の広瀬川インタビュー vol.18」。2010年11月12日の収録で、聞き手は仙台市の広瀬川創生室の職員でした。
杜王町と仙台の関係でいちばん知りたいところなので、発言を4つに分けて確かめます。
仙台を選んだ理由は「生まれ育った街」だから
荒木飛呂彦は1960年、宮城県仙台市に生まれました。くわしい歩みは荒木飛呂彦の経歴と作品一覧にあります。
仙台をモデルにした理由は、「仙台は自分が生まれ育った街なので、なじみ深いというか、描きやすいんですね」。続けて「何よりリアリティが出るので」とも話しています(インタビュー第1回)。
2016年の『るるぶ特別編集 杜王町』でも、理由を「地形なども知っていて具体的にイメージできる」と答えています。
今の仙台と杜王町を見比べたい人は、同じ答えの続きも押さえておきたいところ。作者は「今の仙台というより、暮らしていたころのイメージに近いかもしれません」と話しています。
S市が仙台市、杜王町はその郊外という設定
「仙台のどこ?」への答えにあたるのが、インタビュー第1回のこの発言です。第4部を連載していたころ(1992年〜1995年)の設定を、作者はこう振り返っています。
S市というのが仙台市で、杜王町はその郊外の街という設定で、仙台市そのものが舞台ではなかったんです。
第3回でも、作者は「杜王町は仙台市ではないですが」とひと言添えています。
仙台市の区や町名から探すより、「S市(仙台市)の郊外の架空の町」と考えるほうが作者の説明に合います。
地形は東松島市のあたり、街並みは泉区や鶴ヶ谷
杜王町は、地形と街並みで原型になった場所が分かれています。
インタビューでは、聞き手がファンの間にある「岩手県の宮古市では」という説を尋ねています。作者の答えは「地理的にイメージしたのは、宮城県の松島の北、東松島市のあたりです」でした(第1回)。
作中の杜王町は、太平洋に面した海沿いの町と紹介されています(『地球の歩き方 JOJO』)。
ベッドタウンとしての街並みは別です。参考にしたのは「当時開発が進んでいた泉市」(今の仙台市泉区)や、宮城野区の鶴ヶ谷ニュータウンでした。
作者は高校時代、東北学院高校榴ヶ岡校舎に通っていました。「毎日のように風景が変わっていく」のを見た体験も、「いくらかは反映されているかもしれない」と話しています。
作中でも杜王町は、1980年代からS市のベッドタウンとして急に発展した町という設定です。もとにした場所が2つに分かれているので、仙台の地図の上では1か所に決まりません。
仙台そのものを舞台にしなかったのは殺人鬼が出るから
殺人鬼が出てくる第4部で仙台を舞台にするのは「さすがにどうかな」と考えた、と作者は話しています。そこで「市民の皆さんになるべくご迷惑がかからないように」、杜王町という架空の街を作りました(インタビュー第1回)。
市の名前が「S市」と伏せ字になっているのも、この配慮から来ています。
第4部と第8部の杜王町は同じ町?
同じ名前の、別の町です。公式サイトの第8部の紹介にも「第4部とは別の、ですが…」と書かれています(公式ポータル 第8部)。
町の名前も名産も同じなので、第4部の続きの町だと思いやすいところ。2つの杜王町の違いを表にしました。
| 項目 | 第4部 | 第8部 |
|---|---|---|
| 時代 | 1999年 | 2011年(震災の約半年後から) |
| 作中の住所 | M県S市のベッドタウン | M県S市紅葉区 |
| 人口 | 58,713人(1994年時点) | 4万7,228人 |
| 町の名産 | 牛たんのみそづけ | 牛たんミソ漬け |
| 町で起きていること | スタンド使いが集まってきている | 震災で隆起した「壁の目」 |
名前と名産は同じでも、時代・住所・人口が違います。第8部は「同じ名前の別の町」と思って読むと、似た名前の人物が出てきても混乱しません。
第4部の人口は、ガイドブック『地球の歩き方 JOJO』(2022年)に載る1994年時点の数字です。第8部の住所と人口は、公式ポータルの用語解説の記載によります。
名産の牛たんミソ漬けが出てくるのは『ジョジョリオン』第1巻で、第4部の「牛たんのみそづけ」とは書き方が違うだけです。
第8部の震災の設定について、作者は朝日新聞夕刊(2011年7月2日)で語っています。舞台を杜王町にすることはもともと決めていて、構想の段階で震災が起きました。
そのうえで作者は、「杜王町は仙台市がモデルなので避けて通ることは出来ませんでした」と述べています。
第8部の主人公東方定助が見つかるのも、震災で隆起した「壁の目」のそばでした(『ジョジョリオン』第1巻)。公式サイトの用語解説では、「壁の目」は震災当日の深夜に隆起した南北10kmの壁と説明されています。
杜王町の地図は原作の何巻にある?
第4部の杜王町の主な地図は、原作第33巻と第38巻に載っています。ほかの作品も含めて、地図が見られるところをまとめました。
| 地図 | 載っている巻 | 中身 |
|---|---|---|
| 杜王町の地図 | 第33巻 | 町全体の地図 |
| 杜王駅前の上面図 | 第38巻 | 駅前の店の位置 |
| 「密漁海岸」の地図 | 『岸辺露伴は動かない』第1巻 | ヒョウガラ列岩と二本松のあたり |
| 第8部の杜王町地図 | 『ジョジョリオン』の単行本 | 第8部の町 |
町の配置を確かめたいなら、まず第33巻を開いてみてください。『ジョジョリオン』の単行本の地図は、町のシンボルマークも第4部と違うデザインです。
注意したいのが、地図どうしの食い違いです。第33巻の地図では、第32巻に出た「CAFE れんが亭」の場所に「カフェ ドゥ・マゴ」と書かれています。
しかも第38巻の上面図では、ドゥ・マゴは第33巻の地図と別の場所にあります。2つの地図で店の位置が合わなくても、読み違いではありません。
仙台の側から杜王町をたどるなら、ガイドブック『地球の歩き方 JOJO』(2022年7月14日発売)があります。出版社の紹介によると、「仙台の歩き方」と荒木飛呂彦のインタビュー、折込地図が収められています。
杜王町の地名・人名と仙台の対応
杜王町には、仙台と同じ地名や、仙台から名前をとった人物が出てきます。「同じ字の地名がある」と「モデルと紹介された」は根拠の強さが違うので、分けて見ていきましょう。
仙台と同じ地名(定禅寺・勾当台・国見)
作中の定禅寺・勾当台・国見は、どれも仙台市に同じ地名があります。それぞれの場所に作中で何があるかを、表にしました。
| 作中の地名 | 作中にあるもの | 仙台とのつながり |
|---|---|---|
| 定禅寺(のちに浄禅寺) | 東方仗助の家、アンジェロ岩 | 仙台市の地名「定禅寺」と同じ字 |
| 勾当台 | 岸辺露伴と杉本鈴美の家、オーソン(第8部には勾当台公園) | 仙台市の地名「勾当台」と同じ |
| 国見(国見峠) | トニオのレストラン、国見峠霊園 | 仙台市の地名「国見」と同じ |
東方仗助の家がある定禅寺のように、主人公たちの暮らす地区に仙台の地名が使われています。ここでの対応は、「仙台に同じ字の地名がある」というところまでです。
物語の途中で変わった地名もあります。「定禅寺」は読みはそのままで「浄禅寺」に、「杜王駅」は「杜王町駅」になりました。
仙台の地名と同じなのは、最初に使われた「定禅寺」の字のほうです。作中の「浄禅寺」は、定禅寺と同じ場所を指しています。
仙台から名前をとった人物(広瀬康一・花京院典明)
第4部の語り手広瀬康一の名字は、仙台市を流れる広瀬川から来ています。作者はインタビュー第3回で「広瀬康一君は仙台のシンボル・広瀬川から、それしかないですよ」と話しています。
第3部の花京院典明も、名字は仙台市の地名「花京院」からとられました(画集『JoJo6251』1993年)。杜王町が出てくる前の第3部から、仙台の地名は人物の名前に使われていたことになります。
ホテルや店のモデルとコラボの店
作中の店や建物には、実在の店がモデルと紹介されたものもあります。催しの間だけ作中の名前を名乗った店と合わせて、表にしました。
| 作中の名前 | 実在のもの | 根拠 |
|---|---|---|
| 杜王グランドホテル(承太郎の宿) | 江陽グランドホテル(仙台市) | 2016年のコラボの告知 |
| 靴のムカデ屋 | 履物店「むかでや」(仙台市、1934年創業) | ガイドブック2冊の紹介 |
| ごま蜜団子(第8部の杜王銘菓) | 岩手県の和菓子店の「生菓子」 | 2012年の原画展で限定販売 |
| 亀友デパート | イオン仙台店の「亀友マーケット」 | 2016年のコラボ(期間限定) |
| オーソン | ローソン仙台柳町通店 | 2012年・2016年のコラボ(期間限定) |
実在の店がモデルと紹介されているのは、杜王グランドホテル・ムカデ屋・ごま蜜団子の3つです。亀友は2016年、オーソンは2012年と2016年の催しの間だけ作中の名前になった店でした。
ごま蜜団子のように、仙台ではなく岩手県の店がもとになったものもあります。
ムカデ屋のモデルは、『るるぶ特別編集 杜王町』と『地球の歩き方 JOJO』の2冊で紹介されています。
仙台と杜王町の公式コラボの年表
仙台市では、2012年・2016年・2017年に、杜王町にちなんだ公式の催しが開かれています。期間と中身を年表にまとめました。
| 期間 | 名前 | 中身 |
|---|---|---|
| 2012年7月28日〜8月14日 | 荒木飛呂彦原画展 ジョジョ展 in S市杜王町 | シリーズ25周年の原画展(せんだいメディアテーク) |
| 2016年8月5日〜14日 | ジョジョ七夕まつり in S市杜王町 | TVアニメ第4部と仙台のコラボ。上映会・七夕飾り・ホテルでの展示など |
| 2017年8月4日〜9月10日 | ジョジョのデザインマンホール | 仙台市が9か所に期間限定で設置 |
| 2017年8月12日〜9月10日 | ジョジョフェス in S市杜王町 | 誕生30周年。原画展「ジョジョ展 in S市杜王町 2017」(せんだいメディアテーク) |
どれも期間限定の催しで、2026年10月29日時点ではすべて終わっています。仙台で聖地めぐりをするなら、出かける前に知っておきたい点です。
「S市杜王町」という名前は、作中の住所をそのまま催しの名前に使ったものです。
2016年の七夕まつりでは、江陽グランドホテルの宴会場で第4部の展示会が開かれました。仙台空港アクセス鉄道では、ヘッドマークを第4部仕様にした列車も走りました。
2017年の原画展は、2012年の原画展の再開催ではありません。開催の発表で、展示内容を一新すると告知されました。
杜王町と仙台のよくある疑問
ほかにも気になりやすい5つの疑問に、短く答えます。
杜王町は仙台の何区にあるの?
どの区にもありません。作者の説明では、杜王町はS市(仙台市)の郊外に作られた架空の町です。
外伝『デッドマンズQ』では、S市が政令指定都市になり、杜王町は区のひとつになっています。インタビューでこの話を振られた作者は、「S市内に取り込まれる形で合併したようです(笑)」と答えています。
杜王町の行方不明者はどれくらい多い?
第4部の杜王町は、平均の7〜8倍の行方不明者が出る町です(第29巻、通算第274話の康一の説明)。
同じ町には、1983年から連続殺人鬼の吉良吉影がひそんでいました。手のきれいな女性を48人殺し、遺体を消していたため、被害者の多くは行方不明者として扱われていました。
犯行の中身は吉良吉影の記事にくわしくまとめています。
仙台のジョジョのマンホールは今もある?
仙台市の公式ページには、2017年8月4日から9月10日までの「期間限定」で9か所に置いた、とあります。今も設置中という案内は、このページにはありません(2026年10月29日時点)。
絵柄は仗助、露伴、承太郎、康一、花京院、鈴美とアーノルド、吉良、鋼田一豊大、音石明の9種類です。
杜王町の英語表記は?
TVアニメ第4部のサウンドトラック『O.S.T Vol.1』では、杜王町は「Morioh Cho」と書かれています。発売は2016年7月27日で、副題は「Good Morning Morioh Cho」です(公式ポータル)。
実写映画の杜王町はどこで撮影した?
仙台ではなく、スペインのシッチェスで撮影されました。キャストと撮影地の話はジョジョ4部の実写映画の記事にまとめています。
根拠となる描写と発言
杜王町と仙台の関係を示す発言と記載を、出典つきでまとめました。
| 描写・発言 | 出典 | それが示すこと |
|---|---|---|
| 「仙台は自分が生まれ育った街なので(略)描きやすい」 | 広瀬川インタビュー第1回(2010年) | モデルが仙台の理由 |
| 「S市というのが仙台市で、杜王町はその郊外の街という設定」 | 同 第1回 | 杜王町は仙台市の郊外の町 |
| 「宮城県の松島の北、東松島市のあたり」 | 同 第1回 | 地形のモデル |
| 「市民の皆さんになるべくご迷惑がかからないように」 | 同 第1回 | 架空の町にした理由 |
| 「広瀬康一君は仙台のシンボル・広瀬川から」 | 同 第3回 | 人名の由来 |
| 「地形なども知っていて具体的にイメージできる」 | 『るるぶ特別編集 杜王町』(2016年) | 仙台を選んだ理由 |
| 「杜王町は仙台市がモデルなので避けて通ることは出来ませんでした」 | 朝日新聞夕刊(2011年7月2日) | 第8部の震災の設定 |
| 「東北のM県S市にあるベッドタウン」 | 公式ポータル 第4部 | 公式の住所 |
| 「第4部とは別の、ですが…」 | 公式ポータル 第8部 | 第8部は別の町 |
| 杜王町の地図・杜王駅前の上面図 | 原作第33巻・第38巻 | 町の配置 |
作者の発言で言い切れるのは、モデルが仙台であることと、杜王町がS市(仙台市)の郊外の架空の町であることまでです。店や場所の1対1の対応は、公式の催しやガイドブックで紹介されたものに限られます。

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