空条承太郎は一巡後の世界にいない|メイド・イン・ヘブンの仕組み

一巡後の世界に空条承太郎や徐倫はいません。死んだ人の枠には、別人が納まっています(第6部第17巻)。

世界を一巡させたのは、第6部『ストーンオーシャン』の敵、エンリコ・プッチ神父のスタンド、メイド・イン・ヘブン。生物以外の時間を無限に加速させ、宇宙を終わりまで進めて次の宇宙の同じ時点に「一巡」させます。

加速から新しい世界までが最後の数話で一気に進むので、「どこからが一巡なのか」「誰が残るのか」がつかみにくいところ。この記事では、原作の描写と作者の発言を分けて、段階ごとに巻とアニメの話数つきで確かめられるようにまとめました。

この記事は第6部の結末(徐倫たちの生死と世界の一巡)と、第7部以降の世界の位置づけに触れます(ネタバレを含みます)。

メイド・イン・ヘブンとは(能力・ステータス・前提となる設定)

メイド・イン・ヘブンは、プッチのスタンドの完成形で、C-MOONがさらに進化した姿です(第6部第17巻)。基本情報を先に表にまとめました。

項目内容
本体エンリコ・プッチ(G.D.st刑務所の教誨師、DIOの親友)
登場する部第6部『ストーンオーシャン』(全17巻・全158話)
初登場第6部第17巻/アニメ第6部第36話「メイド・イン・ヘブン その①」
進化の流れホワイトスネイク → C-MOON(第16巻) → メイド・イン・ヘブン(第17巻)
ステータス破壊力B/スピード無限大/射程距離C/持続力A/精密動作性C/成長性A
姿前半身だけの馬に人の上半身が生えた形。顔や手の甲に時計の印
元ネタクイーン(Queen)のアルバム『Made in Heaven』(1995年)
雑誌掲載時の名前「天国への階段(STAIRWAY TO HEAVEN)」。単行本で変更

ステータスの「スピード無限大」は、本体の身体能力が上がるという意味ではありません。時間を加速させた分だけ、相対的に速くなるという数字です(第17巻)。

ここを押さえておくと、次の節の「生物だけが取り残される」がすんなり読めます。

仕組みを追うための4つの前提

土台にあるのは、DIOが研究した「天国へ行く方法」という理論です。そのメモはDIOの死後に承太郎が焼き捨てたため、プッチは承太郎の記憶DISCから中身を得ました(第6部)。

理論の柱は「幸福とは覚悟である」という考え方。全生物に自分の未来をあらかじめ知らせ、覚悟させた世界がプッチの言う「天国」です。

実現の条件として、原作では次の6つが挙げられています(第6部)。

  • 「ザ・ワールド」(DIOの死後はDIOの骨で代用)
  • 信頼できる友
  • 極罪を犯した36人以上の魂
  • 14の言葉
  • ザ・ワールドを捨てる勇気
  • 最も重力が弱い場所

場所はケープ・カナベラルで、「新月を待て」という指示もあります。ただ条件そのものは「新月のときの重力」なので、プッチは新月を待たずに条件を満たしました(第16〜17巻)。

スタンドの進化は3段階です。物語の中盤、緑色の赤ん坊と融合したプッチは、背中に星のあざを得ます(第11巻)。

重力の影響が弱いケープ・カナベラルに着くと、ホワイトスネイクはC-MOONに進化しました。メイド・イン・ヘブンになるのは、最終決戦で「重力を最も軽減できる位置」に到達したときです(第17巻)。

ホワイトスネイクやC-MOONの能力は、進化した後には引き継がれません(第16〜17巻)。

前提の最後は、時を止める能力との関係です。プッチはこの能力の前後から、スタープラチナが止めた時を認識できるようになりました(第17巻)。承太郎の時止めが通じにくくなった理由がここにあります。

元ネタの曲

元ネタは、クイーン(Queen)のアルバム『Made in Heaven』(1995年)です。フレディ・マーキュリーの死後に出た、クイーン最後のスタジオアルバムで、表題曲はフレディが書きました。

発売はイギリスで1995年11月6日、日本で11月17日です。雑誌掲載時(第152話・第157話)の名前「天国への階段」は、レッド・ツェッペリンの曲名と同じ表記。単行本で改められました。

世界の一巡はどういう仕組みか(6つの段階)

一巡とは、加速で宇宙を終わらせ、次の宇宙が同じ歴史をたどって再び2011年に戻ることです(第17巻)。加速の開始から別の世界までは、6つの段階に分けられます。

先に流れを表で。原作はすべて第6部第17巻で、アニメは第6部の第36〜38話です。

段階何が起きるか原作の巻/アニメの話
1. 加速が始まる「天国の時」が訪れ、プッチが光に包まれて消える第17巻/アニメ第36話
2. 生物が取り残される承太郎・エルメェス・アナスイ・徐倫が倒れる第17巻/アニメ第36〜37話
3. 宇宙が一巡する宇宙が終わり、特異点を経て次の宇宙が2011年に戻る第17巻/アニメ第37〜38話
4. 別人が枠に入る死んだ承太郎や徐倫の枠に別の人物が納まる第17巻/アニメ第38話
5. 一巡の手前で停止プッチが2011年11月で加速を止め、エンポリオに倒される第17巻/アニメ第38話
6. 別の世界へ円環が閉じず、それまでとも異なる世界に切り替わる第17巻第158話/アニメ第38話

一番大きな区切りは、段階4の世界と段階6の世界が別物だということ。ここを分けておくと、「一巡は失敗したのに、なぜ別の世界になったのか」がほどけます。

アニメでこの3話がどう進むかは、アニメ第6部の最後の3話で何が起きるかで話ごとに追ってみてください。

1. 時間の加速が始まる(「天国の時」)

加速が始まるのは、新月を待たず、承太郎が銛を放ったその瞬間です(第17巻/アニメ第36話)。プッチの体から光が漏れ出し、姿が消え、ケープ・カナベラルの重力の逆転は元に戻ります。

2. 生物だけが加速に取り残される

加速するのは生物以外の時間で、本体のプッチだけが加速した速度で動けます(第17巻)。ほかの生物には、周りの物とプッチが高速で動いているように見えます。

作中では車が事故を起こし、冷凍庫に入っていた人は一瞬で凍死し、建物などの非生物は劣化して崩れます。時計は正確に、ただし超高速で進み、日の出と日没も速まります(第17巻)。

子どもが老いる描写や食べ物が腐る描写もあり、生物と非生物の線引きは原作で厳密には示されていません。

徐倫たちは態勢を立て直すため海へ向かい、アナスイが囮になります(アニメ第37話)。承太郎がスタープラチナで時を止めても、プッチの行動がわずかに早く、ナイフが徐倫に迫りました。

プッチはアナスイ、エルメェス、承太郎の順に倒し、徐倫の抵抗で片目を失いながらも徐倫を殺します(第17巻)。徐倫は倒れる前にエンポリオを逃がし、ウェザーのDISCを託していました。

ウェザーはこれより前の第16巻で倒れており、加速の中を生き延びたのはエンポリオだけでした。

3. 宇宙が終わり、次の宇宙が同じ歴史をたどる(一巡)

加速は止まらず、宇宙は終わりを迎えます。特異点を経て次の宇宙が生まれ、同じ歴史をたどって再び2011年が訪れます(第17巻/アニメ第37〜38話)。「世界の一巡」と呼ばれるのは、この段階です。

プッチの狙いは、全生物に「2012年から次の宇宙の2012年」までを体験させ、運命を魂に刻ませることでした(第17巻)。

加速の原理は、第17巻のスタンドデータに短く書かれています。「地球や月や全宇宙の重力を利用して、時間を少しずつ加速していっているようだ」という説明です。

同じ欄には「詳しい原理はここでは計り知れない」ともあり、原作はこれ以上踏み込んでいません。

4. 一巡後の世界で「枠」に別人が入る

一巡後の世界では、あらゆる運命があらゆる生命体の魂に記憶されています(第17巻)。全生物は「いつ何が自分の身に起こるか」を潜在意識で把握し、「覚悟」した状態にあります。

この理屈は「魂に一巡分の記憶を引き継がせる」というものなので、一巡の前に死んだ人は入れません。死んだ承太郎や徐倫の枠には、別の人物が納まっています(第17巻)。

その別人は、一巡後のG.D.st刑務所の面会室で実際に描かれています(第17巻/アニメ第38話)。

プッチが決戦の前に徐倫たちを殺したのも、ここに理由があります。ジョースターの因縁を新しい世界に持ち越させないための行動でした(第17巻)。

5. プッチが一巡の手前で加速を止め、エンポリオに倒される

唯一生き残ったエンポリオには、「プッチから逃れる運命」がありました(第17巻)。プッチはその運命を消すため、一巡が完成する少し前で加速を止めます。

止めたのは新しい宇宙の2011年11月。加速を始めた2012年3月21日より前の時点です。目覚めたエンポリオがいたのはG.D.st刑務所で、そこにプッチが現れます(アニメ第38話)。

運命に干渉できるのはプッチだけ。エンポリオはそれを逆手に取り、わざと殴られて、徐倫から託されたウェザーのDISCを頭に入れさせます。

発現したウェザー・リポートで部屋を高濃度の酸素で満たし、プッチを酸素中毒に追い込みます。最後の交渉を退け、とどめを刺しました(第17巻/アニメ第38話)。

6. 円環が閉じず、別の世界に切り替わる

加速を始めた時点まで戻る前にプッチが死んだので、円環は閉じていません。一巡が完成しないまま本体を失った「天国」は、未完成のまま崩壊しました(第17巻)。

世界は、それまであった世界とも異なる新しい世界として再構築されます。エンポリオが立っているのは道端で、車で通りかかった女性に名前を尋ねられます(第17巻第158話)。

女性の名前はアイリン。徐倫によく似ていて、左肩には星のあざがあります。恋人のアナキスはアナスイに似ています。

エンポリオが乗り損ねたバスには、エルメェスに似た乗客もいました。ヒッチハイカーとして車に乗るのは、ウェザーに似た青年です(第158話)。

アイリンのあざを見たエンポリオが自分の名前を告げて、第6部は幕を閉じます。

一巡後の世界で何が残り、何が失われるか

まず、一巡後の世界で何がどうなるかを表にしました。根拠はいずれも第6部第17巻です。

項目一巡後の世界でどうなるか
元の人物(承太郎・徐倫・エルメェス・アナスイ・ウェザー)残らない。枠に別の人物が入る
出来事の流れ(運命)残る。魂に記憶され、知っても変えられない
意識としての記憶残らない。潜在意識の「覚悟」として残る
エンポリオ元の世界のまま残る唯一の人物
プッチ本体として残り、運命に干渉できる唯一の存在
スタンドのDISC使える(エンポリオがウェザーのDISCを発現)
ジョースターの因縁持ち越されないよう、プッチが徐倫たちを先に殺した

「運命は残るが、人は残らない」がこの表の要点です。

混乱しやすいのが、2つの世界の違いです。段階4の「一巡後の世界」と、段階6の「プッチが死んだ後の世界」は同じものではありません(どちらも第17巻)。

項目一巡後の世界プッチが死んだ後の世界
いつ・どこ新しい宇宙の2011年11月、G.D.st刑務所再構築された世界の道端
人々の状態運命を知り「覚悟」している運命を知っている描写はない
出てくる人物プッチ、エンポリオ、承太郎・徐倫に似た別人(面会室)エンポリオ、アイリン、アナキス、エルメェス似、ウェザー似
「天国」未完成(一巡の手前で停止)崩壊し、別の世界に再構築

「一巡は失敗したのに、なぜ第7部は一巡後と呼ばれるのか」という疑問は、この2つを混ぜると生まれます。作中で「一巡後」に当たるのは左の列だけで、右の列はそれとも別の世界です。

よくある疑問

一巡後の空条承太郎はどうなったのか

承太郎は一巡の前に死んでおり、一巡後の世界には戻ってきません。ケープ・カナベラルで徐倫をかばった隙を突かれ、頭から裂かれて死亡しました(第6部第17巻)。

このときの承太郎は40歳です(第6部の時点)。一巡後の世界では、死んだ承太郎の枠に別の人物が納まっています(第17巻)。

その人物が描かれるのは、一巡後のG.D.st刑務所の面会室です。エンポリオが目にするのは承太郎と徐倫に似た別人で、本人ではありません(第17巻/アニメ第38話)。

プッチが死んだ後の世界には、承太郎に当たる人物は描かれていません(第17巻第158話)。「一巡後の承太郎」の答えは、本人はおらず、似た別人が枠にいるだけ、と覚えておいてください。

ジョルノや岸辺露伴は一巡後どうなったのか

ジョルノも露伴も第6部には登場しないので、一巡後の姿は原作に描かれていません。第4部・第5部の主な人物は、第6部の登場人物に含まれていません。

ジョルノについては、荒木飛呂彦が第6部第13巻で補足しています。「作中に現れなかっただけ」で、フロリダのどこかには来ていた可能性がある、という趣旨です。

露伴は第9部『The JOJOLands』に、日本から来た有名漫画家「岸辺露伴」として登場します。『ピンクダークの少年』を連載中で、ペン先型のピアスをしているなど第4部とほぼ同じ姿です。性格は落ち着いたものとして描かれます。

第4部の露伴と同一人物かどうかは、原作で明かされていません。

荒木飛呂彦は『JOJOVELLER』HISTORY(2013年)で、第8部を「一種のパラレルワールド」と説明しています。同じ本で「Part4とPart8の杜王町は別の町」とも述べています。

「メイド・イン・ヘブンは未完成」とはどういう意味か

加速を始めた2012年3月21日まで戻る前にプッチが死んだので、一巡の円環が閉じていない、という意味です(第17巻)。止めたのは新しい宇宙の2011年11月で、始めた日には届いていません。

しかもプッチが死んだことで、新しい宇宙では加速も始まらないことになり、「天国」は崩壊しました(第17巻)。

「開始より手前で止めたなら、一巡していないのでは」という疑問は、そのとおりです。原作の描写でも一巡はしきっておらず、だからこそ世界は「一巡後」ではなく別の世界になりました。

一巡後の世界に一巡前の記憶はあるのか

意識として思い出せる記憶は引き継がれません。残るのは、「いつ何が起こるか」を潜在意識で把握した「覚悟」です(第17巻)。

運命を知っていても、結果は変えられません。多少の誤差はあっても運命どおりに進み、干渉できるのはプッチだけです(第17巻)。

例外はエンポリオで、一巡をくぐり抜けた本人なので元の世界の記憶をそのまま持っています。徐倫たちの遺志を受け継いでプッチに挑めたのは、この記憶があるからです(第17巻)。

エンポリオはなぜ一巡後の世界にいるのか

徐倫に逃がされ、加速の間に死ななかった唯一の人物だからです(第17巻)。死んだ人は「天国」に入れない理屈なので、生きたまま加速をくぐった彼だけが、完成直前の「天国」にたどり着きました。

エンポリオは11歳と自称する少年で、正確な誕生日は原作で明かされていません。一巡後の世界での彼には、プッチから逃れ、成長してプッチを殺しに来る運命がありました(第17巻)。

第7部以降は一巡後の世界なのか

原作の描写と作者の発言で、答え方が分かれます。第7部『スティール・ボール・ラン』の本編に、第6部の一巡への直接の言及はありません。

登場するのは、別の世界のジョースター家に生まれたジョニィ・ジョースターのように、第1部と同じ名前を持つ別の人物たちです。ディエゴ・ブランドーも第1部のディオとは別人として描かれます。

作者の発言は、2つの媒体に残っています。1つは『週刊少年ジャンプ』2004年8号の巻末コメント。「ジョジョの奇妙な冒険はパラレルワールドに突入」という一文です。

もう1つは『青マルジャンプ』(2004年)のインタビューです。荒木飛呂彦はそこで「作家の創作の姿勢として、過去の作品を完全に葬り去ることはよくない」と語りました。第7部は、第6部終盤の出来事が影響した新世界の作品だとも明言しています。

原作の描写は「直接の言及なし」、作者の発言は「第6部終盤の出来事が影響した新世界」。この2つを分けて覚えておくと、「一巡後か、パラレルワールドか」の話で迷いません。

並行世界を行き来するD4Cの能力は第7部の大統領のスタンドで、一巡とは別の仕組みなので混同しないでください。

根拠となる描写と発言

一巡の流れの出典は、上の段階ごとの節に添えました。ここでは「一巡後の世界に誰がいるか」と「第7部以降との関係」の根拠だけを整理しています。

上の3行が原作の描写、下の3行が作者の発言です。原作の巻は第6部の巻数で、通算では第64〜80巻にあたります。

描写・発言出典それが示すこと
一巡後の刑務所の面会室に、承太郎と徐倫に似た別人が現れる第6部第17巻/アニメ第38話死んだ人の枠に別の人物が納まり、元の人物は戻らない
2012年3月21日に加速開始、2011年11月で停止第6部第17巻円環が閉じていない=未完成
プッチの死後に再構築された世界で、左肩に星のあざのあるアイリンと出会う第6部第17巻第158話/アニメ第38話一巡後の世界とも別の世界に、徐倫に似た別人がいる
「パラレルワールドに突入」『週刊少年ジャンプ』2004年8号 巻末コメント第7部は別の世界
「過去の作品を完全に葬り去ることはよくない」、第6部終盤の出来事が影響した新世界『青マルジャンプ』2004年 インタビュー第6部とのつながりを認めている
第8部は「一種のパラレルワールド」、杜王町は別の町『JOJOVELLER』HISTORY(2013年)第4部と第8部は別の世界

見比べると、「誰がいるか」は原作が答え、「第7部以降との関係」は作者の発言が補っている、という分担が見えてきます。巻を手に取って確かめたい人は、出典の欄から当たってみてください。

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参考

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